User Manual

Multichannel Monitoring Tutorial Booklet (M2TB) rev. 3.5.2
Masataka Nakahara : SONA Corporation
©2005 YAMAHA Corporation, ©2005 SONA Corporation
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3-3-1.ダイレクトサラウンド
ダイレクトサラウンドでは,サラウンドスピーカーの設置位置によって「サラウンド・パンニング」と「後方ステ
レオ感」にトレード・オフの関係が生じる.
以下,ダイレクトサラウンドの代表的な設置例(11±10°ITU-R),135°,150°)に関して,それぞれ
の特徴を述べる([Fig.23]
[Fig.23]サラウンドスピーカーの設置角度(ダイレクトサラウンド):110°(±10°),135°,150°
3-3-1-1.ITU-R:110°(±10°)
サラウンドスピーカーを「後ろ」と言うよりは「横」に設置する ITU-R 配置では,サラウンドの左右のセパレーシ
ョンが良好であり,精密な音場を表現しやすい.但し,サラウンド・パンに関しては,頭部背後をかすめるような
表現に留まることが多く,奥行きのあるサラウンド・パンの表現が苦手となる(すなわち,サラウンド・パンによ
る音像定位が,ぐるっと円を描いて回らない)
3-3-1-2.135°
音源位置を「横」ではなく「後ろ」として知覚するためには,135°以上後方にサラウンドスピーカーを設置する
必要があるといわれている.
一般家庭における設置位置の多くは,ITU-R のような「横」ではなく,135°程度の「後ろ」であることも多い.
横配置(100°〜120°)と後ろ配置(150°)の中間的な性格をサラウンドスピーカーに持たせたい場合には,
135°の位置にスピーカーを設置すると良い.
このような LS,RS の配置では,LS とRSの開き角が 90°となり,1970 年代に登場しその後消滅した 4ch(2-2)
QUAD 方式でのスピーカー配置と同じである.但し,QUAD では,L R の開き角も 90°であり,4 つの全
てのスピーカーが全て等価な条件で設置されることが推奨されていた(すなわち,L LS,R RS の開き角も
90°).QUAD 配置は,L R の開き角が 60°である従来の 2ch ステレオとの互換性の欠如がその後の普及に障
害をもたらしたとも言われているが,高い音場再現性を持つ配置であることは最近の研究でも報告されており,バ
ーチャル再生用の研究システムなどで現在でも使用される例がある.QUAD 配置は,サラウンドのフィールド録音
に使用されることの多いワンポイントマイクロホン,IRT-クロスなどでも見ることができ,少ないチャンネルでサ
ラウンド音場を効率よく再現する方法の一つである.
QUAD 配置と ITU-R 配置にも共通点がある.それは,L LS もしくは R RS の開き角が双方とも 90°という
点である.従って,L/R LS/RS の繋がりにおいては,90°程度の設置角度の差が良いと考えられる.すなわ
ち,ITU-R の配置は,L R の開き角が 60°である従来の 2ch ステレオとの互換性を基本に考えられたために,
L
C
R
RS
LS
°
±
110
°
10
°
135
°
150