User Manual

Multichannel Monitoring Tutorial Booklet (M2TB) rev. 3.5.2
Masataka Nakahara : SONA Corporation
©2005 YAMAHA Corporation, ©2005 SONA Corporation
4/74
まえがき
スタジオの音響設計が仕事である僕にとって,最終的に正しい再生環境・特性を持たせて作品(スタジオ)をスタ
ジオのオーナーへと手渡すことは,何にも代え難い別れのセレモニーです.
マルチチャンネルスタジオにおいてそれを実現するためには,各種規格団体やメーカーから公表されている様々な
技術書類の断片を集め,それらを整理し理解する必要があります.
それには,膨大な手間と時間がかかりますが,結果としてその中で THX のスティーブンを始めとした様々なすばら
しいプロフェッショナル達との交流が生まれたことは僕にとって大きな財産です.
彼らの教えてくれたことを自分なりに整理していくうちに,新たなヒントやスタジオのデザインテクニックなど,
僕にとってとても貴重なスタジオ設計のツールが生み出されたことも事実です.
最初は,ベースマネージメントやディフューズサラウンドなど,一見プロフェッショナルとは相反するようなテク
ニックに疑問を持ちましたが,それらを否定することから考えるのではなく,僕より遙かに経験豊富で一流の人々
がなぜそのようなことを考え,また実際にサラウンドスタジオに必要とされているのか,といった姿勢で彼らと接
しているうちに,その奥に隠れているサラウンド再生の数々の問題や特徴をかいま見ることができたように思いま
す.
本書は,そのような一流のプロフェッショナルの方々から教えてもらったことをまとめた貴重なブックレットです.
従って,本書で僕が行ったことは彼らの代筆作業であり,本当の著者は情報提供者である彼らだと思っています.
この場をお借りして,感謝致したいと思います.
そのような意図から,特に規格に関係する部分に関しては,なるべく広く平等に,かつ正確に様々なマルチチャン
ネルのフォーマットを列記させて頂いたつもりです.
一部,音響設計者としての僕の意見を反映させて頂いた内容もありますが,その点はご了承下さい.
作品制作には,リスナーとしてのユーザー体験が大きな財産になると思っています.
そのためには,正しい再生環境でマルチチャンネル・オーディオを聞くための空間が業務用途だけではなくパーソ
ナル用途としても必要です.
「百見
は一聞
に如かず」です.
本書が,皆さんのマルチチャンネル再生環境を自信を持って構築して頂くための「百見
の手助けとして活用され
れば,幸いです.
中原雅考,著者
株式会社ソナ