User Manual

Multichannel Monitoring Tutorial Booklet (M2TB) rev. 3.5.2
Masataka Nakahara : SONA Corporation
©2005 YAMAHA Corporation, ©2005 SONA Corporation
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3-5. 再生環境と再生イメージの互換性
サラウンドスピーカーの設置位置 L/R スピーカーの開き角の違いによって,サラウンド作品の再生イメージが全
く異なってしまうケースは希である.従って,エンドユーザーは,ITU-R 等の配置でなくても殆どのサラウンド作
品を楽しむことができる.
但し,各チャンネルの相関関係を巧みに使用し精密なサラウンド音場を生成するような音楽作品を制作する場合に
は,スピーカー配置の互換性が重要となる.そのような場合の対応も含め,制作側の再生環境には一定の「標準」
が求められる時がある.その場合の代表が,Rec.ITU-R BS. 775-1 あり,サラウンドの再生環境としては,ま
ずは ITU-R 基本に考えることが重要である.一方,制作環境に Rec.ITU-RBS.775-1 を適用とした場合に,
部屋形状,広さ,作品のコンテンツ等によりデメリットの方が大きくなるケースもあり,その場合には,他の配置
を検討することも有用である.例えば,非常に狭い環境では,耳の直ぐ横に配置した ITU-R 配置のサラウンドスピ
ーカーの再生音に違和感を覚える場合がある.
再生環境の「標準化」も重要であるが,エンジニアのミキシング作業の行いやすさもサラウンド制作においては重
要である.制作者は,自身のミキシングの行いやすい環境で,他のスピーカー配置に対する互換性に配慮したサラ
ウンド制作を行うことが重要である.
そのためには,様々なスピーカー配置に関する特徴を把握しておくことが重要である.また,実際の制作において
は,設置位置の不確定なスピーカー(チャンネル)に対して他のチャンネルとの相関性が高い信号を用いないよう
にすると,スピーカー配置の違いによる再生イメージの変化が少なくなる.例えば,L/R に関しては,様々な環境
でも互いに等価な再生環境が得やすいので,相関性の高い信号を用いても支障はないが,L/R C,もしくは L/R
とLS/RS に関しては,環境により互いの位置関係が一定ではないため,相関性の高い信号を用いると,再生イメー
ジや再生特性が大きく変わってしまう危険性がある.ディレイ処理を多用した音場づくりなど,各スピーカー(チ
ャンネル)間の相関性が重要となる制作手法などに関しては,注意が必要である.
[Fig.28]再生信号の相関性と再生環境の互換性
L/R
良い
悪い
C
LS/RS
L/R
C
LS/RS
様々な再生環境との互換性
低い
高い
L/R vs C vs LS/RS
再生信号の相関性