User Manual

Multichannel Monitoring Tutorial Booklet (M2TB) rev. 3.5.2
Masataka Nakahara : SONA Corporation
©2005 YAMAHA Corporation, ©2005 SONA Corporation
43/74
3-7. モニター距離
モニター距離(リスニングポイントから各スピーカーまでの距離)は,長いほど再生音場は安定する.すなわち,
広い部屋ほど安定したサラウンド再生が可能であり,狭い部屋ほどサラウンド再生が不安定になりがちである.但
し,モニター距離が長いほど部屋の影響を受けやすくなるため,室内音響に関して十分な配慮を行う必要がある.
[Fig.31]は,Rec.ITU-RBS.775-1 に準拠したスピーカー配置(L/R;30 度,LS/RS;110 度)において,
リスニングポイントから前後に 25cm ずつ(頭 1 つ分)移動した場合の各スピーカーの設置角度のずれを計算した
ものである
[4][8]
.厳密に設置したスピーカーの設置角度(L/R;30 度,LS/RS;110 度)も,設定したリスニ
ングポイントから外れると変化してしまう.例えば,リスニングポイントから後方に移動した場合,L-R の開き角は
狭くなり
θ
L,R
=30°
θ
L,R
サラウンドスピーカーは後ろから横位置へと近づいてくる
θ
LS,RS
=110°
θ
LS,RS
.このような変化を示したものが,[Fig.31]のグラフである.上半分が,前方 25cm 移動した時のず
れ角を示しており,下半部が後方に 25cm 移動した時のずれ角を示している.破線が,L及びRのずれ角
θ
=
θ
L,R
-
θ
L,R
)を表しており,実線が,LS 及び RS のずれ角(
θ
=
θ
LS,RS
-
θ
LS,RS
)を表している.また,横軸は,モニ
ター距離を表している.
θ
L,R
30deg
L
C
R
LS
RS
θ
LS,RS
110deg
Monitoring distance; r [m]
(+25cm)
(-25cm)
L
C
R
LS
RS
θ
L,R
θ
LS
,RS
θ
L,R
θ
LS
,RS
Off-axis error ;
θ
=
θ
’-
θ
[degree]
Monitoring distance; r [m]
12 3451.5 2.5 3.5 4.5
0
+5
+10
+15
-5
-10
-15
LS, RS
L, R
Forward 25cmBackward 25cm
robust
critical
[Fig.31]リスニングポイントの移動によるスピーカー設置角度の変化
[4],[8]
[Fig.31]より,前後移動によるスピーカーの設置角のずれに関して,以下の事項が分かる.
1.モニター距離が短くなるほど,急激にずれ角は大きくなる.
  ⇒小さな部屋の方が,大きな部屋より再生環境が不安定になりやすい(リスニングエリアが狭い)
2.L/R より,LS/RS のずれ角の方が大きい.
  ⇒サラウンドスピーカーの方が,フロントスピーカーより再生音場が不安定になりやすい.
3.L/R のずれ角は,後方に移動した場合よりも前方に移動した場合の方が大きい.
  ⇒フロントスピーカーは,前方にカバーエリアを広く得られるような配置が望ましい.
4.LS/RS のずれ角は,前方に移動した場合よりも後方に移動した場合の方が大きい.
  ⇒サラウンドスピーカーは,後方にカバーエリアを広く得られるような配置が望ましい.
以上より,特に「狭い環境に設置されたサラウンドスピーカー」に関しては,その再生音場が不安定になりやすく,
なるべく広いカバーエリアを与えるなどの工夫を検討した方が良いと考えられる.
著者の経験では,3m 以上のモニター距離では比較的安定した再生環境が得られ,2m 下のモニター環境では再生
音場が不安定になりやすいことが多い.また,多くのスタジオでは,その中間の 2m〜3m のモニター距離となって
いる場合が多く,これは ITU-RBS.1116-1 の推奨値と同じである.