User Manual

Multichannel Monitoring Tutorial Booklet (M2TB) rev. 3.5.2
Masataka Nakahara : SONA Corporation
©2005 YAMAHA Corporation, ©2005 SONA Corporation
46/74
3-8-1.コム(櫛形)フィルター現象:距離差>8mm
リスニング・ポイントまでの距離差が 8mm 以上ある 2 つのスピーカーから同じ音を再生した場合,20kHz 以下
の周波数帯域にディップが生じる.8mm 距離差は,音速に換算して約 0.025msec に相当する僅かな時間差を
意味することになり,物理的な距離差以外にも,スピーカーの個体差,ワイヤリング,機材等の電気的な遅延差が
原因となって生じることもある.
3-8-2.ハース効果:距離差>30cm
2つの音源がある場合に,近い方の音源に定位を強く感じ取ってしまう現象で,「先行音効果」とも呼ばれる.ハー
ス効果が生じる距離差は,音源信号の種類にもよるが,一般的には 30cm 以上が一つの目安となる.ハース効果が
生じているモニター環境では,パンニング時の音像推移がスムーズに表現されないなどの障害が生じてしまう可能
性がある.例えば,サラウンド・スピーカー(LS,RS)が,フロント・スピーカー(L,C,R)に比べて 30cm
以上近い距離に設置されている場合,サラウンド⇒フロントへのサラウンド・パンニングを行ったときの音像推移
が,サラウンド側に定位が強く引っ張られてしまうために,スムーズに表現できなくなる.
他には,ディフューズサラウンド環境において,サラウンドのカバーエリアが広くとれず,結果として最も近いサ
ラウンドスピーカー廻りにだけ音像が定位するなどの弊害が考えられる.
3-8-3.サブウーファーとのクロスオーバー:距離差>1m
リスニング・ポイントまでの距離が,他のスピーカーとサブウーファーとで 1m 以上異なる場合に,その合成特性
にディップが生じる可能性が高くなる.
ディップは,サブウーファーのカットオフ周波数周辺に顕著に生じる.
後述するベースマネージメントをモニターシステムに用いている場合は,メイン・チャンネルの周波数特性に大き
な障害を与えることになるため,特に注意が必要である.
以上のモニター障害が生じる場合には,スピーカー設置位置の再検討,スピーカーの位相調整(特にサブウーファ
ー)を試みる必要がある.
そのような調整による改善が期待できない場合には,電気的なディレイを各スピーカーに対して適用する必要があ
る.
また,ディレイの他にも,アッテネーター GEQ(PEQ)を各スピーカーに対して適用できるようにモニターシス
テムを構築しておくと,モニタリング特性の調整時に役立つことが多い.