User Manual

Multichannel Monitoring Tutorial Booklet (M2TB) rev. 3.5.2
Masataka Nakahara : SONA Corporation
©2005 YAMAHA Corporation, ©2005 SONA Corporation
52/74
D.20Hz からの重低音を再生するラージモニターと同等の再生特性を全てのチャンネルに与えることができる.
プロ用サブウーファーの多くは,20Hz 程度までの低域再生が可能である.一方,20Hz までの低域が再生可能な
メインスピーカーは,ごく一部の高級モデルを除きプロ用モニターでもほとんど無い.ベースマネージメントを用
いることで,全てのメインスピーカーを 20Hz までの低域再生が可能なモニターへと拡張できる.
このことは,映画等の劇場用作品を扱うスタジオでは,特に重要である.映画館では,重低音の再生が可能な巨大
スピーカーで L,C,R が再生される.不用意な超低域ノイズがマスターソースに含まれていないことを劇場用作品
の制作過程でチェックしておくことは重要である.
E.コンシューマーの再生方式による再生音の確認を行うことができる.
DVD-Video プレーヤーや AV レシーバーでは,[Fig.35]と同様のベース・リダイレクション機能の装備が必須
となっており,スピーカー設定の項目にて,対象スピーカーを「small」に設定することで,ベースマネージメント
が行われる.これは,コンシューマーの試聴環境で多い「小型サテライトスピーカー+サブウーファー」といった
再生システムにおける低域拡張のために配慮された機能である.民生機のベースリダイレクション機能は,Dolby
DIGITAL の必須機としての搭載に端を発し,最近では,DTS,DVD-Audio,SuperAudioCD,デジタル放
等様々なソースに対して機能するようになってきている.
ベースマネージメントでは,各チャンネルの低域信号が電気的に合成される(電気的合成,Electricalsummation)
一方,ベースマネージメントを用いないで再生された低域信号は,室内といった空間を経てリスナーの耳元で合成
される(空間的合成,Acoustical summation).電気的合成は,空間的合成に比べて,信号の干渉が顕著に生じ
やすい.例えば,フロントチャンネルとサラウンドチャンネルの双方に同じような低域信号が記録されており,そ
れらが互いに逆相に近い関係となるような処理がなされている場合,ベースマネージメント再生では,それらの低
域成分が消失してしまう恐れがある.このことは,ベースマネージメントを用いない制作環境では聞こえていた低
域成分が,エンドユーザー環境では聞こえなくなってしまう可能性を示唆している.制作時にベースマネージメン
トによる再生音を確認しておくことは,そのような低域成分の再生ミスを防ぐために有効である.
[Fig.37]は,ベースマネージメント・コントローラーを有しないスタジオの再生特性の例であり,[Fig. 38]は,
ベースマネージメント・コントローラーを有するスタジオの再生特性の例である
[4]
.双方とも DVD-Video の再生
環境用に調整してあるため,メインチャンネルに比べ LFE チャンネルの再生レベルが+10dB ゲインを保ってい
る必要がある.
ベースマネージメント・コントローラーを用いたスタジオでは,低域特性の乱れはあるものの,低域において全て
の帯域で+10dB のゲインが保たれている([Fig.38].一方ベースマネージメント・コントローラーを用いてい
ないスタジオでは,帯域により+10dB であったり,そうでなかったりと不安定である([Fig.37]
[Fig.37]LFEvs.C:ベースマネージメント無し
10dB?
55
60
65
70
75
80
85
16
20
25
31.5
40
50
63
80
100
125
160
200
250
315
400
500
630
800
1K
1.25k
1.6k
2k
2.5k
3.15k
4k
5k
6.3k
8k
10k
12.5k
16k
20k
1/3oct. band frequency [Hz]
SPL [dB]
LFE
C