User Manual

Multichannel Monitoring Tutorial Booklet (M2TB) rev. 3.5.2
Masataka Nakahara : SONA Corporation
©2005 YAMAHA Corporation, ©2005 SONA Corporation
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ベースマネージメントをプロの再生環境に適用させる場合には,ベースマネージメント・コントローラーとスピー
カーとの厳密なフィルター特性のマッチングや,サブウーファーをメインチャンネルのウーファーユニットと等価
なグレードとして扱い,その設置場所を検討するなどの配慮が必要である.単に[Fig.35]を模倣しただけのベー
スマネージメントでは,音色の分離や違和感のある音源定位など各種のモニタリング障害を引き起こす可能性があ
るため注意が必要である.
以下に,ベースマネージメント・コントローラーのフィルター特性に関して言及する.
■ローパス・フィルター
【カットオフ周波数】
サブウーファーから再生される低域信号が,定位感を持たない低い周波数に設定する必要がある.
但し,カットオフ周波数を低くしすぎると,サブウーファーの受け持つ帯域幅が狭くなり,低域特性の改善効果が
少なくなる.
定位感を優先すると 60Hz 下が理想的であるが,低域改善効果との兼ね合いから,一般的には,80Hz をカット
オフ周波数とする仕様が多い.
【スロープ】
スロープが緩やかな場合,上記で設定した周波数以上の音を認知してしまう可能性があり,その結果サブウーファ
ーに定位感を感じてしまうことがある.
逆に,スロープが急峻すぎる場合,メインスピーカーとサブウーファーとの一体感が乏しくなり,低域と中高域そ
れぞれに音色が分離しやすくなる.
一般的には,-24dB/oct.をスロープの特性とする仕様が多い.
■ハイパス・フィルター
【カットオフ周波数】
ローパス・フィルターで設定した値と同じ周波数をハイパス・フィルターにおいても用いる.
【スロープ】
ローパス・フィルターと最適な特性でクロスするためのスロープ特性を用いる.
その際には,フィルター同士の特性だけでなく,使用するスピーカーの特性も考慮する必要がある.
すなわち,「フィルター特性」+「スピーカー特性」=「クロスオーバー特性」である.
ここでは,以下の仕様が既に設定されているものとし,ハイパス・フィルターのスロープに関して解説する.
・LPF fc=80Hz,-24dB/oct.
・HPF fc=80Hz
サブウーファーの再生帯域は,適用するローパス・フィルターのカットオフ周波数より高域までのびていることが
多い.従って,サブウーファーから再生される低域特性は,ローパス・フィルターの仕様と同じ「fc=80Hz,-
24dB/oct.」となる.
ハイパス・フィルターを介して再生されるメインスピーカーのカットオフ特性は,この「fc=80Hz,-24dB/oct.」
をターゲットとして設定されなければならない.
 例1)メインスピーカーの特性が,80H 以下で 12dB/oct.で減衰するようなスモールタイプの場合,
     「ハイパス・フィルターの特性」=12dB/oct.とする.
     すなわち,「フィルター12dB/oct.」「スピーカー12dB/oct.」「クロスオーバー24dB/oct.」