User Manual

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Y-S3 スピーカシステムデザインガイド
直接音と反射音
はじめに
Y-S
3
は、スピーカを中心とした出力系システムの設計支援ソフトであり、特に、
スピーカの配置設計において有効なツールとなる。このソフトを用いることで、
設計者は必要な床面形状を簡易に入力することができ、所定の位置と角度でスピ
ーカを設置したときの床面上でのカバーエリアを 3 次元内にて検討することが可
能となる。
また、Y-S
3
は複数スピーカによる干渉を考慮した音圧分布の計算や、特定の受聴
点における応答の計算、システムのゲイン設定を変更することによる床面での
SPL 計算などを実行することが可能で、このソフトを使うことにより出力系シス
テムの設計時点において検討すべき多くの項目に関する有効な情報を得ることが
できる。
以下では、スピーカの狙い位置の設定、特定の受聴点における応答の評価、出力
レベルの設定を例に取り、実際の設計過程において Y-S
3
の計算結果がどのように
利用できるかの例を示す。また、Y- S
3
は簡易形状入力と適切なカバーエリアの設
定によるスピーカ配置設計を前提として、直接音のみの影響を計算しているが、
実際の音場における応答は、壁、床、天井からの反射音の影響を受ける。従って、
直接音計算の結果が実際の音場における応答にどのように反映されるかを把握し
ておくことは、設計時点での評価に際して有効である。以下では、実測の例も併
せて示すことで、計算結果と実音場における応答との対応を示す。
例として用いたホールは 600 席の多目的ホールで、台形型の床面を持つ。室幅は
22m、奥行き 24m(舞台先端から客席後壁まで)、天井高は 14m(客席部最大)
で、室の残響時間は 1.2 秒(500Hz 帯域、空席、幕設備状態)である。
ホール:600 席の多目的ホール
スピーカ種類: IF2112/64 × 2台からなるスピーカアレイ1つ
スピーカ位置: 正面高さ 8m(舞台床面から 7.2m)