User Manual

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Y-S3 スピーカシステムデザインガイド
直接音と反射音
-20
-10
0
100 1000 10000
[Hz]
[dB]
5: X=6,Y=6 の点における結果
青:Y-S
3
,赤:実測/直接音到達後 15ms 積分値,ピンク:実測/同 100ms 積分値
(実測は移動平均値)
高域の落ち込みとして現れる場合の評価
つづいて図 6 に、点 Bx=1m, y=10m)における結果を示す。この点は、客席全
体のほぼ中央付近に位置する。青線は Y-S
3
の計算結果、赤線は実際のホールでの
測定結果で直接音到来から 15ms までの積分値を示す。実測結果は、8192 ポイン
トのフーリエ変換によって求めたスペクトラムを、25 ポイントごとの移動平均に
より平滑化している。グラフの縦軸は相対音圧レベルで、それぞれの応答の最大
値を 0dB として基準化している。
Y-S
3
での計算結果(青線)を見ると、特定周波数でのディップは表れておらず、
4kHz 付近から右肩下がりの特性となっている。これは、受聴点から 2 つのスピー
カまでの距離差が小さいために、干渉によって打ち消しあう周波数がかなり高い
帯域に存在することによる。
この高音域での落ち込みは、実際の音場でも同様に観測される。実測における
15ms までの積分値(赤線)の結果を見ると、 2kHz 付近からその特性が落ち込
んでいて、最大で 20dB 程度の低下となっていることが分かる。また、点Aにおい
て見られた床からの反射音によるディップは、この点では同じ周波数には表れて
いない。これは、点Aが座席中の測定点であるのに対し、点Bが通路上の測定店
であることから、反射音の性状が異なるため、と考えられる。
以上より、Y- S
3
を用いた設計評価において見られる受音点ごとの応答の特徴は、
実音場における結果にも同様に表れることが分かる。こうした特徴を設計段階で
把握しておくことは、設置後の現場における測定と最終調整に対しても有効であ