User Manual

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Y-S3 スピーカシステムデザインガイド
直接音と反射音
8:レベル設定(変更時)
このとき遠方の点、例えばX=0, Y=22.0における SPL 95.4dB となっている。
しかし、実際の音場では、反射音の影響により、ここまでのレベル低下は起こら
ないため、結果の評価とシステムの選定にはこの点での配慮も必要である。そこ
で次に、実際の音場における測定結果と比較しながら、この影響を示す。
距離減衰の比較
ステージ上にスピーカを設置し、距離減衰を比較した。スピーカは舞台上に設置し、
スピーカより 2m の点から 18m の点まで 2m ごとの点における応答を測定した。また、
Y-S
3
上でも同じ条件での応答を計算した。音源と受音点の位置関係と結果を図 9 に示
す。横軸は音源からの距離(x 軸方向)を示し、縦軸は、3m 地点の応答を基準とした
相対レベルを示す。1kHz の結果をみると、Y-S
3
の計算結果では一様な減衰が認められ
るのに対し、実音場での結果では、拡散音の影響で 13m 地点から減衰がほとんど認め
られない。11m 地点は中通路上の点であり、床面からの反射の影響が他と異なるため、
特異な結果を示している。また、2kHz 帯域の結果では、Y-S
3
の計算結果で、距離によ
る減衰が 1kHz 帯域に比べてゆるやかに見える。これは、客席面が傾斜しているために
受聴点が徐々にスピーカの軸上に近づき、指向性の影響によってレベルが上昇するた
めである。実音場での応答では、1kHz 帯域の結果と同様に、13m 地点以遠で減衰が認
められない。また、指向性の影響によるレベル上昇は、反射音の影響に埋もれて、個
別には観測できない。
このように、実音場では、遠方の点において拡散音の影響で定常状態の SPL が上昇す
るため、直接音ベースの計算結果を使ったシステムの選定をする場合に配慮が必要と
なる。例えば、場内全点において所望の SPL を得ようとする場合のシステム選定では、
遠方の点における計算結果が所望の SPL を上回るように選定すると、実際に必要なシ
ステムに比べて、かなり大き目のシステムを選んでしまう可能性がある。この距離減