User Manual

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Y-S3 スピーカシステムデザインガイド
直接音と反射音
2.特定の受聴点における応答の評価
前章で示したような、複数スピーカによる干渉の影響は、受聴点での応答においては周波
数特性上のディップとなって現れる。このとき実際の音場においては、反射音の影響によ
ってディップの深さが緩和されることが予想される。
以下では、前章と同じくセンター位置に 2 台構成のスピーカアレイを設置した場合を例に
とり、直接音のみによる計算結果と実際のホールにおける測定結果との比較例を示す。
受聴点における周波数特性
深いディップが表れる場合の評価
5 に点 Ax=6m, y=6m)の点における結果を示す。この点は、客席中央から
6m 上手側に寄った場所(客席上手側半分のエリアのほぼ中央付近)に位置する。
青線は Y-S
3
の計算結果、赤線は実際のホールでの測定結果で直接音到来から 15ms
までの積分値、ピンクの線は同じく実測結果で 100ms までの積分値を示す。実測
結果は、8192 ポイントのフーリエ変換によって求めたスペクトラムを、25 ポイン
トごとの移動平均により平滑化している。グラフの縦軸は相対音圧レベルで、そ
れぞれの最大値を 0dB として基準化している。
Y-S
3
での計算結果(青線)では、1.2kHz 付近に 20dB 程度のディップが現れてい
る。このディップの良否を判断するのは難しいがY-S
3
では、可聴化機能を用い
て、この応答を音として聞くことで、判断の材料とすることができる。
ただし、こうしたディップは実際の音場では反射音の影響によって緩和されるこ
とに注意が必要である。実測における 15ms までの積分値(赤線)の結果では、
当するディップは若干高い周波数に現れているが、その深さは緩和されていて、
最大でも 10dB 程度に収まっていることがわかる。また、このディップは、15ms
までの積分値、および、100ms までの積分値の両方に現れており、直接音付近の
強い到来音による特性が、初期反射音部分全体の特性にも強く影響し、よって、
聴感にも大きな影響があることを示している。このことから、複数スピーカから
の到来音同士の干渉による影響を設計段階で確認しておくことは、重要であると
言える。