User Manual

ヤマハパワーアンプ ホワイトペーパー
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EEEngine は入力された信号のレベルを動的に判別
しています。パワートランジスタへの電力供給ステ
ージではクラス D の考え方を利用して、入力信号を
追従した必要最小限の電力を供給するため発熱量が
少なく、効率を飛躍的に向上させています。一方、
音声信号の経路は入力から出力まですべて純粋なア
ナログ信号であり、出力ステージはクラス AB 回路
を採用しているため、優れた周波数レスポンスを保
ち、電磁波やダンピングファクターなどに影響を及
ぼしません。EEEngine 搭載アンプはクラ AB 級の
音質を保ちながら、50%以上の高効率を実現してい
ます。発熱が少ないことは、パーツの長寿命化や冷
却ファンノイズの低減にも寄与します。TXnTn
NXAMP では、2Ωという過酷な負荷状況においても
安定動作できるように新開発のパワートランジスタ
や低損失のトランスを採用したさらに進化した
EEEngine を搭載しています。
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7] EEEngine
動作波形
出力段はクラス
AB
回路を持ち、音質に優れ、発熱も少ない。
EEEngine と他社技術の違い
近年力を伸ばしているヤマハ以外のあるパワーアン
プメーカーでも、EEEngine と非常に似た駆動方式が
採用されています。この駆動技術は EEEngine 同様に
入力信号を動的に判別して電力を供給しますが、そ
の判別手法が異なります。
高い周波数(短い波長)の信号を忠実に増幅するた
めには、パワーアンプは出力を早く立ち上げる必要
があり、高いスルーレート(最大応答速度)が要求
されます。 入力信号に常に追従してい EEEngine
と他社技術ですが、そのままでは急激な入力波形の
変化へは対応できず、電源供給が追いつかなくなり
ます。
他社の駆動方式ではこの問題を対処するために入力
信号にディレイを設けることで、電源供給に時間の
余裕を持たせています。
ヤマハでは、出力信号に影響を及ぼすような回路を
追加することは出来るだけ避けるべきだと考えてお
り、音質に影響を与えないシンプルな回路を目指す
という思想に基づいて設計しています。EEEngine
立ち上がり時間の速い入力波形への電源供給を行う
ために、補助電源供給ラインを設けています。速い
応答速度が必要と感知された時のみ、「高速電圧バッ
ファ」が動作し、主電源供給を補助します。この補
助電源を搭載することにより、EEEngine はオーディ
オ信号になんら影響を与えることなく高スルーレー
トを達成し、入力信号に忠実な出力と高効率を両立
させています。
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8]
他社のアンプ回路図。急な入力信号に対応するために、入力信号は
ディレイを通過する。
[
9] EEEngine
では、急な入力信号の変化に主電源供給ラインだけでは追
いつかない場合に高速電圧バッファが補助的に動作する。オーディオ信号
は付加的な回路を通らないため音質への影響を受けない。