User Manual

ヤマハパワーアンプ ホワイトペーパー
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1. EEEngine について
1.1. はじめに
ヤマハパワーアンプの基本理
ヤマハパワーアンプの設計理念は至ってシンプルで、
入力信号の自然で忠実な増幅を基本としています。
音響システムにおいて、ミキサーからの微小な電気
信号( mW)を空気振動の音に変換して多くの聴衆
に届けるためには、パワーアンプでスピーカーを駆
動するのに十分なレベル(数十~数千 W)まで増幅す
る必要があります。システムの最終的な出力信号を
制御するパワーアンプが果たすべき役割は、どのよ
うな増幅レベルでも、またどのようなスピーカーに
対してでも入力された信号をいかに忠実に出力でき
るか、という点です。
[
1]
入力信号:
70Hz
の正弦波バースト
.
[
2]
競合
A
社の出力波形
出力波形がオーバーシュート・アンダーシュートしている。信号の経路に
何らかのフィルター特性があると思われる。
[
3]
ヤマハ
T5n
の出力波形
自然で入力信号に忠実な波形を確保している。
1.2. 各種パワーアンプ駆動方式について
パワーアンプの駆動方式にはいくつかの手法(クラ
ス)があり、現在業務用パワーアンプの大多数はク
ラス AB、クラス H、もしくはクラス D といった
動方式を基本に設計されています。ヤマハでは
EEEngine という、クラス AB とクラス D を融合した
画期的な駆動方式を多くのアンプに採用しています
(特許取得済)下記に各駆動方式の特徴を記します。
クラス AB
クラス AB は長年プロオーディオ業界で標準的な駆
動方式であったため、現在でも多くの現場でクラス
AB を採用したアンプが見られます。シンプルな回
路構成と優れた音質を特徴とし、ヤマハでは
P2200(1976 年発売)PC2002M1982 年発売)など
のモデルに採用されていました。しかしクラス AB
は、入力信号の大小に関わらず、最大出力を引き出
すのに必要な電圧を常にパワートランジスタへ供給
する必要があります。そのため大量に電力を消費し、
発熱(図 4 の赤い部分)が非常に大きい、という問
題があります。効率が低いため、クラス AB のパワ
ーアンプは出力が小さく出力のわりに筐体が大きく
重いものが一般的です。トランスによる電源効率の
低さもあり、クラス AB アンプの効*は音楽ソース
の再生時(定格出力の 1/8ロック音楽などで時折ク
リップする程度)で 20%程度です。つまり、アン
に供給された電力の 80%が熱として失われている
です。この効率の問題を解決するべく、その後の駆
動方式が開発されてきました。