小型ユニットラインアレイスピーカーの 優位性について
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2. VXL シリーズの音響性能に関する 3 つのポイント ポイント① 小口径スピーカーユニットの採用 VXL シリーズの開発において、ラインアレイスピーカーとして垂直方向の指向性をより狭く、水平方向の指向性をより 広くという音響性能を、音声帯域で理想的に実現するために最もこだわった点が小口径スピーカーユニットの採用です。 VXL シリーズで使用しているスピーカーユニットは、超小型サーフェスマウントスピーカー VXS1ML 用に開発された 1.
水平方向については、図 2 に示すように、小口径スピーカーユニットによる 170 度 ( ※ 1kHz ~ 4kHz の平均値 ) という 広指向性により、リスニングエリアをカバーするスピーカーの本数が減らせるため、干渉エリアも少なくなるほか無駄 な残響感も減り、音声を明瞭に伝達することができます。 図2 水平方向の指向特性 -30 -40 -50 -60 -70 -20 -10 6dB 0 10 0dB 20 30 4000Hz 40 50 -6dB 3150Hz 60 -12dB 70 -18dB -80 -24dB 80 -90 -30dB 90 2500Hz 2000Hz 1600Hz 1250Hz 1000Hz 3
ポイント② 下方向への実用指向角度の拡大制御 ラインアレイスピーカーは線音源の特長を生かして垂直方向への音の広がりを制御しているため、スピーカーを高い 場所に設置した場合、前方の席がサービスエリアから外れて音量と明瞭性が不足してしまうことがあります。一般的な 対処法としては、前方席用のサブスピーカーを別途設置したり、J カーブと呼ばれるアレイ形状のスピーカーで下方向 の指向角を広げたりといった方法が用いられます。また、垂直方向の指向角を可変できるスピーカーもありますが、 その多くは下方向だけでなく上方向にも同時に広げる方式のため、天井からの不必要な反射音による明瞭性の低下や、 指向性が必要以上に広がることで音圧レベルが低下し遠達性能が悪化するといった欠点があります。 VXL シリーズでは、必要なエリアに対してのみ効率的な拡声を行うため、背面スイッチの切替えにより垂直方向の下側 だけに指向角を拡大することができます。指向角の拡大はパッシブ型 ディレイで下方のユニットに遅延を与えることで 制御しており、図 3 に示すように、スピーカー形状を変えずに下方向の実用指向角度を VXL24 で 10 度、VXL16 で
ポイント③ ラインナップ組合せによるスケーラビリティー VXL シリーズは、設備の様々な要望に対応できるよう、スピーカーユニット数の違いで VXL1-8、VXL1-16、VXL1-24 の 3 種類のラインナップをそろえていますが、更にそれらを垂直や水平に連結して組み合わせることで、設置環境や 用途に応じて音圧やカバーエリアを柔軟に調整可能なスケーラビリティーを持っています。 垂直連結 ラインアレイスピーカーは線音源のため垂直方向の音の広がりが少なく距離減衰が少ないことを特長としていますが、 その効果には限界があり、一定の距離を超えると点音源と同じように音が上下にも広がりながら伝搬するようになり 距離減衰も大きくなります。線音源の効果が持続する距離を有効距離と呼び、次式 [1] で計算することができます。 CD = (L 2 × f ) 700 CD = 有効距離 (m) L = ラインアレイの長さ (m) f = 周波数 (Hz) 例えば、VXL1-24 について、1 台のみの場合と 2 台を垂直連結した場合の 2kHz での有効距離を計算してみると、1 台(アレイの長さ約 1.1m)では 3.
3. 最後に 以上のように、コラムタイプのラインアレイスピーカー VXL シリーズは、建築構造や内装デザインと調和し、空間デザ インの自由度を高めるとともに、明瞭な拡声と高品位な音楽再生を実現する高い音響性能を提供することで、市場の 課題解決を目指しています。 高解像度ユニットやキャビネットの素材と形状の吟味、高品位な音質や音響性能の追求など、細部までこだわりを施す ことはもちろん、130 年を超える歴史が培ったノウハウや生産技術によって支えられ、このコンセプトの実現に至り ました。 既に好評を得ているサーフェスマウントスピーカー VXS シリーズ、シーリングマウントスピーカー VXC シリーズと ともに、意匠や用途に応じた柔軟なシステム設計を可能とし、心地のよい空間演出をサポートいたします。 参考文献 [1] M.Ureda, Line Arrays: Theory and Applications, AES Convention Paper 5304 Presented at the 110th AES Convention, Amsterdam, May12-15, 2001.
【 Appendix 】 【ラインアレイスピーカーは、なぜハウリングが起きにくいのか?】 一般的に、ラインアレイスピーカーはポイントソーススピーカーに比べてハウリングしにくいと言われていますが、その理由は、 ラインアレイスピーカーのカップリングのメカニズムおよび両スピーカーの距離減衰の違いから説明できます。 ラインアレイスピーカーは複数のスピーカーユニットから分散して放射された音のカップリングによる音圧増加を積極 的に利用しています。具体的には、各スピーカーユニットから受聴点までの直線距離の差が 1/4 波長以内に納まる範囲 のユニットは音圧増加に寄与しますが、距離差がそれ以上となるユニットは音圧低下に作用し、半波長離れると音圧が 相殺されます。 スピーカーから一定以上離れて距離差が 1/4 波長以内に納まる受聴点では、全てのスピーカーユニットが音圧増加に寄 与します。一方、スピーカーに近い位置では、アレイ中心部と端部のユニット間の距離差が大きくなり、音圧増加に寄 与するユニットの数が限定されるため、加算される音響エネルギーも小さくなります。 2 【赤色の範囲】音圧増加に寄与 1 ①と②の距離差が 1
ここで、スピーカーから同一距離の受聴点において等しい音圧レベルで拡声した場合を想定して、両スピーカーの違い を比較してみます。 スピーカーの近傍に置かれたマイクへの音響エネルギーの入射条件を比較すると、ラインアレイスピーカーの場合は、 上記カップリングのメカニズムで説明したように、全スピーカーユニットのうち距離差が 1/4 波長以内となるユニット のみ部分的に加算されて入射するのに対し、ポイントソーススピーカーでは、一つのユニットからの出力がそのまま入 射するため、マイクへ入射する音響エネルギーはラインアレイスピーカーのほうが小さくなります。 Microphone 一部のスピーカーユニットのみ加算されるため、 マイクへの入射エネルギーは小さい (a) ラインアレイスピーカー Microphone ひとつのスピーカーユニットからそのままマイクに入射される (b) ポイントソーススピーカー ラインアレイスピーカーがハウリングしにくいと言われるもう一つの理由として、ユニットひとつ当たりの出力がポイ ントソーススピーカーに比べて小さくなるため、スピーカー近傍でのマイクへの入射エネルギーは少なくなるというこ
ポイントソーススピーカー (点音源) ラインアレイスピーカーは 近傍での音圧レベルが小さい ラインアレイスピーカー (線音源) 音圧レベル 距離減衰 -6dB/DD 同一距離において 等しい音圧レベルで拡声 距離減衰 -3dB/DD スピーカーからの距離 このように、同一距離の受聴点において等しい音圧レベルで拡声する場合、ラインアレイスピーカーは、距離減衰の少 なさに起因するスピーカー近傍での音圧レベルの低さとスピーカーユニットの部分的なカップリングにより、マイクへ 入射する音響エネルギーを小さく抑えることができるため、ポイントソーススピーカーに比べてハウリングに強く、安 定した拡声がしやすいというメリットがあります。 9