User Manual
MOTIF XFが発表され、さらなる進化を遂げ
ようとしているヤマハM OTIFシリーズは、すでに
10周年を迎えた。ここでは、これまでのMOTIFシ
リーズの歴史を各機種の特長を踏まえながらその
進化の歴史を紹介したいと思う。
音色と使いやすさを追求した
シリーズ最初のシンセMOTIF
まずはその前に、MOTIFの歴史が始まったこ
ろのことを話そう。2001年当時は、ある意味ハード
シンセの過渡期とも言えるだろう。ソフトシンセも登
場してはいたが、コンピューターの処理速度も今よ
り遅かったため、現在ほどの安定した感じではな
かった。そんな中、各シンセ・メーカーはそれまで登
場していた音源方式を組み合わせたりしつつ新し
い機種を登場させていた。当時ヤマハからは“EX
シリーズ”というシンセサイザーが登場していて、こ
のシリーズは本体にAWM2、ANやVLといった
物理モデル、モデリングをさらに進めたFDSP音源
というさまざまな音源を詰め込んだシンセだった。
そしてMOTIFシリーズの最初を飾るシンセ、そ
の名も“MOTIF”が2001年に登場する。EXシ
リーズのように複数音源を同時に詰め込むスタイ
ルをやめ、音源方式は当時のハードシンセとして
は大容量の84MB波形メモリーを搭載、AWM2
+サンプリング機能に絞られた。またAWM2以外
の音源方式を使用するために、Modular Synt
hesis Plug-in Systemという、プラグイン・ボード
を装着することで本体の音源方式とは全く独立し
た音源を追加することのできるシステム(MOTIF
では3スロット装備)が採用されたことで、よりスピー
ディーに、さらにボードを拡張することで発音数自
体が増えるという、使う人に合わせたパワーアップ
ができるシンセとなった。ちなみにボードの種類とし
ては、ANで使用されていたバーチャル・アナログ
音源、物理モデルVA音源、DX7を進化させた6
オペレーターのFM音源などが用意されていた。
また、サンプリングした波形情報を音楽的にコント
ロールするために、Integrated Sampling Seq
uencerという、波形を独自のアルゴリズムにより自
動的にスライスし、それをシーケンスで鳴らし再構
築、オーディオでありながらテンポ変更などに演奏
を追従させるという機能が内蔵された。これによ
り、例えばギターのカッティング・フレーズなどで、テ
ンポを変えたりハネ具合を変えたりしながらそのま
ま演奏させるというようなことが可能になった。
操作的な部分では、膨大な数になっていくシン
セのプリセット音色を探しやすくするために、音色
の種類(ピアノ、ギターなど)でサーチできるカテゴ
リー・サーチ機能を搭載。さらに、お気に入りを登
録しておけるフェイバリット・カテゴリー機能も用意
された(当時かなり使いやすくうれしかった記憶が
ある)。また、シングルやマルチなどの枠を越えてワ
ンタッチで呼び出せるマスター・モード機能が用
意されライブで活用できたり、本体左側にある4組
のノブ、スライダーを使ってPC上のシーケンス・ソフ
トをスタート、ストップしたりボリューム、パンなどをコン
トロールすることができたりと、音色だけでなく使い
やすさという点もシリーズ・スタート時からかなり意
識されていたと言えるだろう。さらに演奏の際に便
利な機能としては、パフォーマンス・モードが搭載さ
れていた。これは最大4つまでのボイスの組み合わ
せを記憶しておけるもので、レイヤー、スプリットという
ような設定からアルペジエーター、コントローラーな
ども含めた複雑な組み合わせも記憶しておけるよう
になり、リアルタイムでの表現力が広がった。そして
61鍵 モデル(MOTIF 6)、76鍵 モデル(MO
TIF 7)、88鍵モデル(MOTIF 8)が用意され
ており、以降シリーズを通じて3種類の鍵盤がライ
ンナップされていく。
音楽的な表現力を高めるための
強化を図ったMOTIF ES
MOTIFの音源部分をラックに収めて登場し
たMOTIF-RACKは、2002年に発表される。当
時ラック・タイプの音源は2Uのものが多かった中
で1Uというコンパクトなスタイルで登場。小さくなっ
たことで操作しにくくなってしまった部分がありつつ
も、発音数が62音から128音と約2倍にアップ、音
色メモリー数もプリセット384から640、ユーザーも
128から256と増加。またマルチで使用する際にあ
りがたいインサーション・エフェクト4パート同時使
用可能。さらにリバーブ・エフェクトもクオリティアッ
プ、ハード的にもアサイナブル・アウトが2から4に増
え、プラグイン・ボードも1Uサイズでありながら2枚使
用可能だった。と、コンパクトでありながらかなりの
ハイクォリティで、価格も安く設定されていたためプ
ロからアマチュアまでかなり評判になった。
2003年に登場したMOTIF ESは、MOTIF-
RACKで進化した発音数はそのまま、マルチでのイ
TIMELINE 2001 2002 2003 2004 2005
Other
Related
Models
同時発音数:62+プラグイン・ボード(3スロット)
音色数:[ノーマルボイス]プリセット:384、ユーザー:128、GM:128
[ドラムキット]プリセット:48、ユーザー:16、GM:1
波形メモリー:84MB相当(16ビット・リニア換算)
●
MOTIF
(2001年)
同時発音数:128+プラグイン・ボード(3スロット)
音色数:[ノーマルボイス]プリセット:768、ユーザー:256、GM:128
[ドラムキット]プリセット:64、ユーザー:32、 GM:1
波形メモリー:175MB相当(16ビット・リニア換算)
●
MOTIF ES
(2003年)
同時発音数:128+プラグイン・ボード(2スロット)
音色数:[ノーマルボイス]プリセット:640、ユーザー:256、GM:128
[ドラムキット]プリセット:48、ユーザー:32、GM:1
波形メモリー:84MB(16ビット・リニア換算)
●
MOTIF-RACK
(2002年)
●
S90
(2002年)
●
S90 ES
(2005年)
●
MO6 / MO8
(2005年)
同時発音数:128+プラグイン・ボード(2スロット)
音色数:[ノーマルボイス]プリセット:768、ユーザー:384、GM:128
[ドラムキット]プリセット:64、ユーザー:32、GM:1
波形メモリー:175MB相当(16ビット・リニア換算)
●
MOTIF-RACK
ES
(2004年)
進化を続けるフラッグシップ・シンセの歴史
MOTIF History
MOTIF Series
2
キーボード・マガジン2010年AUTUMN号より(P2〜11)