User Manual
ンサーション・エフェクトは8パートに、波形メモリーも
倍以上とサウンド・クオリティ的なパワーアップを遂げ
たのはもちろん、音楽的な表現力を高めるためアル
ペジエーターにそれまで定番だったパターンだけで
なく、ドラム・ループやギターのカッティングなど1,787
タイプが内蔵された。このアルペジエーターは、
“キーボードメガボイス”というさまざまな奏法の音
色をキー・ナンバーとベロシティ方向にもアサインし
た音色と組み合わせて使うことによって、それまでの
アルペジエーターでは表現するのが難しかった生
楽器の演奏ニュアンスなども、かなりの再現性でリ
アルタイム演奏させることができるようになった。また、
そのころからアマチュアでもマスタリングという言葉を
意識するようになったことも踏まえてか、マスター・エ
フェクトが内蔵されトータル・コンプ的なエフェクト
処理も可能となり、制作から完成まで全行程の音
楽制作を意識したシンセとなった。
MOTIF ESからMOTIF-RACK ES(2004
年発売)への進化として、音楽制作という方向性
を重視、マルチのプリセットが音楽ジャンルごとに用
意された。また、スタインバーグ社とヤマハの共同
開発プロジェクト“STUDIO CONNECTIONS”
が提唱されたことで、PC上のシーケンサーでプロ
ジェクト(曲)ファイルを開くだけでハードウェアの設
定も完了するなど、さらに便利に進化した。
波形メモリーが倍増
複雑な音作りを可能にしたMOTIF XS
波形メモリーがさらに倍になり、2007年に登場
したMOTIF XS。ここへきてプラグイン・ボードは
対応しなくなり、AWM2音源+サンプリング音源
のみに。音作りの機能としては、1音色が8エレメン
トで構成されるようになり、これによりベロシティによる
さらなる細かな音色変化や、複雑な組み合わせな
どが可能になった。そしてパフォーマンス機能はさら
に進化し、アルペジエーターを同時に4つ再生する
ことができるようになり、4パートを使用した曲のアレ
ンジ・データが内蔵されているようなスタイルになっ
た。またエフェクトもパワーアップし、VCM(Virtu
al Circuitry Modeling)によるビンテージ・エ
フェクトを使ったような質感の再現や、ボコーダー
機能も搭載されるなど、音作りの細かい詰めの部
分もかなり充実した。また、カラー液晶ディスプレイ
が搭載され操作性も格段にアップした。
この時点で音色も機能もかなりの充実度となっ
たMOTIFシリーズ。2008年リリースのMOTIF-
RACK XSでは、単なる音色が詰まった箱で終わ
らせない、操作したくなるラックを目指したようで、今
までとは違う独自の操作 性になっている。カテゴ
リー・サーチやノブによるリアルタイムでの音色エ
ディットをしてみると分かるのだが、1Uという限られ
たパネルの中で非常に使いやすい操作性が実現
されている。
受け継がれるMOTIFの系譜
そしてMOTIF XFの時代へ
MOTIFシリーズは、そこから派生した製品が多
く発売されているのも特徴だ。その機能を継承し
た機種を一部紹介しておこう。
2005年に発売されたMO6/8はMOTIF ES
の音質や機能を受け継ぎながら、サンプリング機
能を省き発音数などを抑えることで購入しやすく
なったミドルレンジ・モデル。とはいえ波形、音色数、
アルペジエーター・フレーズなどの肝となる部分は
ほとんどMOTIF ESシリーズと同じというコスト・パ
フォーマンスの高いモデルである。
MMはMOTIFシリーズの波形を受け継いだ
エントリー・モデル。61鍵のMM6は2007年、88鍵
のMM8は2008年登場。初心者にも操作しやす
いよう独自の操作性となっている。またMM6につ
いては軽いので(5.0kg!)ソフトケースなどで持ち
運ぶ場合にも便利。さらにこの価格帯で88鍵盤
も用意されているのはとてもうれしい。
2009年発売のS70/S90 XSはSシリーズの
最新機種。MOTIF XSの基本機能はそのまま、
新たにサンプリングされた142MBのピアノ音色を
加え、さらにパフォーマンス・クリエイター機能により
レイヤーやスプリットなどの組み合わせを簡単に作
ることができたり、演奏者が直感的に操作できるよ
うパネル上のレイアウトが変更されていたりと、演
奏のためにさまざまな機能が追加されている機
種。光るボタンも増え、演奏中などでもかなり直感
的に操作できる。
そして2010年9月、ボディ・カラーをブラックに
変更、そのイメージを大きく変えたM OT IF X F
が登場した。10年という月日の中で、いつもミュー
ジシャンとともに歩み楽 器シーンを牽引してきた
MO TI Fシリーズ。フラッグシップ・モデルと呼ば
れるに相応しいこのシンセサイザーは、今後もさら
なる進化を続けていくはずだ。
2006 2007 2008 2009 2010
同時発音数:128
音色数:[ノーマルボイス]プリセット:1,024、ユーザー:384、GM:128
[ドラムキット]プリセット:64, ユーザー:32、GM:1
波形メモリー:355MB相当(16ビット・リニア換算)
●
MOTIF XS
(2007年)
同時発音数:128
音色数:[ノーマルボイス]プリセット:1,024、ユーザー:384、GM:128
[ドラムキット]プリセット:64、ユーザー:32、 GM:1
波形メモリー:741MB相当(16ビット・リニア換算)、
フラッシュメモリー・エクスパンション・ボードにより最大2GBの拡張が可能
●
MOTIF XF
(2010年)
同時発音数:128
音色数:[ノーマルボイス]プリセット:1,024、ユーザー:384、 GM:128
[ドラムキット]プリセット:64、ユーザー:32、GM:1
波形メモリー:355MB相当(16ビット・リニア換算)
●
MOTIF-RACK XS
(2008年)
●
MM6
(2007年)
●
MM8
(2008年)
●
S70 XS/S90 XS
(2009年)
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