User Manual

ヤマハパワーアンプ ホワイトペーパー
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* 本書でのアンプの効率()は、アンプ部だけでなく主
電源を含んだ製品全体としての効率です。出力定格
1/8(ロックなどの音楽再生レベル)での駆動を想定して
います。
[
4]
クラス
AB
動作波形
音質に優れるが、発熱
(
赤い部分
)
が非常に多く効率は低い。
クラス H
クラス H は入力信号に応じてパワートランジスタに
供給する電圧レベルを段階的に切り替える方式です。
5 を例にとると、入力レベルが小さいときは供給
電圧が最大値の半分で済むため発熱が抑えられ効率
が改善されます。しかし、入力が切り替わりのレベ
ル(+L のレベル)より少しでも大きい場合や、ダイ
ナミックレンジが大きいソースの場合は、最大限の
電圧を供給する必要があるため効率は悪化します。
電圧レベルの切り替え段数を増やすことが出来れば
効率の向上が期待できますが、実際には段数が増え
るごとにスイッチ・ロスが生じ、回路も複雑になる
ため、23 段階に留まるのが一般的です。こうした
ことからクラス H ンプの効率は一般的に 30%程度
となります。また音質面では電圧切り替わり時のノ
イズの克服が課題となります。ヤマハでは PC5002
1982 年発売)にクラス H 方式が採用されていまし
た。当時としては大出力の 500w(8Ω) x2 チャンネル
を実現していましたが、重量は 60Kg もあり、軽量
化の課題もありました。
[
5]
クラス
H
動作波形
電圧を切り替えられるためクラス
AB
よりは発熱が少ないが、実装上の限
界がある。
クラス D
クラス D は、スイッチングを用いた増幅方式です。
(誤解されることが多いのですが「D」は Digital
由来しているわけではありません。Pulse Width
Modulation (PWM)方式により、入力ソースの波形か
ら各時点の信号レベルに応じたパルス幅の信号
PWM 信号を生成します。PWM 信号は必要な分
だけパワートランジスタをスイッチング駆動するた
め効率の高い増幅が可能となり、クラス D アンプで
は一般的に 60%度の効率が実現できます。しかし、
矩形波である PWM で増幅された信号をアナログに
復調するには高周波を除去するローパスフィルター
が必須となり、周波数レスポンス、位相特性、ダン
ピングファクターに影響を及ぼすことがあります。
また、高出力の PWM 信号は電磁波ノイズを発生す
るため様々な対策が必要となるなど、クラス D で大
出力アンプを実現するにはまだ多くの課題が残って
います。ヤマハでは、小型軽量・高効率が要求され
る一部のパワードスピーカーやテレビ/カーオーデ
ィオ用の回路にクラス D 方式を採用しています。
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6]
クラス
D
動作波形
発熱は少ないが、ノイズ抑制など音質面での課題がある。
EEEngine
業務用の高出力パワーアンプの研究開発は、高音質、
高効率、軽量化の両立を探る歴史でした。ヤマハ独
自の EEEngine (Energy Efficient Engine)は、従来の駆
動方式の問題を克服し、クラス AB の音質を保ちな
がら、クラス D の高効率を高次元に両立させる画期
的な技術です。元来はヤマハの Hi-Fi オーディオ設
計のために生まれたアイディアですが、長年の研究
開発の結果、大出力のプロオーディオ用としての製
品化に成功しました。EEEngine はフラッグシップの
TXnTn シリーズをはじめ多くのヤマハアンプ、
よび NEXO NXAMP シリーズに採用されています。